映画『Netaji Subhas Chandra Bose: The Forgotten Hero』

 はじめまして。今年夏に控えるインド留学、インド映画・書籍等について、備忘録的につらつらと書いていきたいと思います。実は少し前にTumblrで記事を書きためていたのですが、デザイナーみたいな人が多くて明らかに浮いていたので、誰でも受け入れてくれそうなWordpressに移行しました。

 記念すべき1ポスト目は、日本とも深く関わりのあったチャンドラボースの映画の感想です。ちなみに、ボースは「चलो दिल्ली!(デリーを目指せ)」というスローガンで独立運動参加を呼びかけますが、本ブログタイトル「चलो काशी(バナーラスを目指せ)」はこのスローガンをもじったというか行先を変えたものです笑。

**あらすじ(完全ネタバレ)**

 インド独立闘士スバース・チャンドラ・ボース(愛称:ネータージー、指導者の意)は、インド国民会議派の議長としてガンディーの下で独立運動を行うが、軍事的手段も辞さないとするボースは、非暴力を訴えるガンディーと袂を分かつこととなる。

 民衆デモの煽動により刑務所に入っていたボースはハンガーストライキを行う。ボースの死を恐れた英国政府は、ボースを仮釈放、自宅軟禁とする。これを機にボースは自宅を抜け出し、イスラム教徒やパターン人、イタリア人になりすまし、ソ連からの援助を求めて英領インドからアフガニスタン、イタリア、ドイツへと移動する。

 ところが、ソ連行きは認められず、次にドイツの援助によりソ連行きを試みるが、ドイツのソ連侵攻により叶わなくなってしまう。そこでボースは、地理的にもインドから遠くなく、東南アジアにおける対英戦争にも勝利していた日本に目をつける。ドイツの潜水艦やボート、航空機を乗り継ぎなんとか日本に到着したボースは、先に日本にいたラス・ビハーリー・ボースやAMナイルらの協力も得て、インド独立連盟総裁とインド国民軍最高司令官に就任する。

 当時日本が占領していた東南アジアにいる印僑独立戦争参加を呼びかけ、本拠地をビルマのラングーンに移す。インド独立闘争に向けた更なる協力を日本に求めるが、インパール戦争で苦戦していた日本は協力を渋る。そこでインド国民軍は独自に闘争を進めるが、日本のインパール作戦失敗により、下火となる。

 日本の敗戦により、日本と協力し対英独立を成し遂げることは不可能となったため、再度ソ連との接触を求めて飛行機に乗る。しかし、乗り継ぎ先の台北で事故死、インド独立を見ぬまま荼毘に付されることとなった。ボースの遺志を継いだインド民衆がインド独立を達成する。

 ボースの一生をおさらいできる良い映画。インドについて勉強している人は必見なのではないかと思う(私は随分先延ばしにしてしまったが。)。言語は英語とヒンディー語ベンガル語や日本語はほぼ用いられていなかった。ちなみに東条英機を演じたのはなんとブータン人の俳優らしい。

 3時間半は確かに長いが、ボースの波乱万丈な一生を考えたら、これを3部作くらいにしてもっと詳細に描いてほしいくらいだと思った。とはいえ、インドではボースの死や功績に関して今でも論議が起こるくらいなので、幅広い層に観てもらうためには、これくらいあっさりしているくらいでちょうど良かったのかもしれない。

 当時の日本は敗戦色が濃厚になっている中でボースに協力していたこともあり、ビルマのシーンでの日本軍の態度にはあまり宜しくないものもあった。いずれにせよ当時躍進している日本がなければここまで独立闘争を進めることはできなかったのではないかと思うし、日本敗戦のせいでボース率いるINAの闘争が頓挫したと言われてもその通りであるため、特段主観が入っておらず良かったと思う。

 ボースの死は、死去を伝える放送があったというところで留められており、ボースの遺志を継いで運動を続ける民衆の姿や、このような動きに困惑する英国政府のシーンが描かれていた。最後には、ボースとインド国民軍がいなければインド独立はいつ果たされていただろうか―というナレーションにより、何も結論付けることはなく映画が終わる。ガンディーは序盤のシーン以外直接的には登場しなかった。

 映画の中で、ボースはガンディーに対し、もはや非暴力の考えが聞き入れられる段階にはないと進言する。これに対しガンディーは、だからサティヤーグラハを呼びかけたではないかと述べるが、ボースが呆れた顔でサティヤーグラハではどうにもならないのだと説得するシーンがある。大半のインド人は、ガンディーを独立の父としながらも、有事の際には武力行使を辞さないという考え方の元育ってきたのだと再度気づかされる(まあ、日本以外の国はそうなのだろうが…。)。日本の子ども向けの映画でこのような発言をする人がいたら非難轟轟になることだろう。

 ガンディーにせよチャンドラ・ボースにせよ、国内のイスラム教徒とともにインド独立を望んでいたが、映画の中のチャンドラ・ボースの一挙一動にも、イスラム教徒への尊敬の念が表れていたところもよかった。

 チャローカーシー!!